【相続土地国庫帰属制度】負担金とは?実際に計算してみました
前回、相続土地国庫帰属制度についての流れを書かせて頂きました。
この記事では、相続土地国庫帰属制度の負担金について分かりやすく解説します。また、最後に実際に計算をしてみましたので、参考にしていただければと思います。
負担金の概要
- 負担金とは?
負担金とは、相続時国庫帰属制度を利用して、相続した不要な土地を「国庫に帰属したいです」と申請し、国から「良いですよ」と承認を受けた者が、最終的に支払わないといけないお金です。負担金を支払わないと、国庫に帰属できません。
土地の性質に応じて算出され、10年分の土地管理費相当額です。 - 負担金の基準となる土地の区分
申請があった土地は、「宅地」「農地」「森林」「その他」の4種類に区分され、この区分に応じて負担金が決定します。
この区分は、土地の登記事項証明書に記載されている「地目」部分を見るわけではありません。申請があった土地は、申請者から提出された書面や、実地調査、関係機関からの情報収集など、客観的事実に基づいてどの区分に当てはまるか判断されるのです。
登記事項証明書上は「宅地」となっていても、実際には成形されておらず、荒地で草等が生え放題になっているような土地の場合、その他の「雑種地」として扱われるかもしれません。 - 負担金の基準となる面積
負担金の計算に用いる面積は登記事項証明書上の面積を基準とします。
例えば登記事項証明書上の面積と、実際の面積が違い、
負担金の算出方法
負担金の算出方法は、申請土地の区分が「宅地」、「田・畑」、「森林」、「その他(雑種地や原野等)」のそれぞれで算出方法が変わってきます。
「宅地」の場合
<原則> 20万円
<例外>
申請土地が市街化区域又は用途地域が指定されている地域内の土地は、面積に応じた算出方法となります。
50㎡以下 | 申請土地の面積(㎡)×4,070円 + 208,000円 |
50㎡~100㎡ | 申請土地の面積(㎡)×2,720円 + 276,000円 |
100㎡~200㎡ | 申請土地の面積(㎡)×2,450円 + 303,000円 |
200㎡~400㎡ | 申請土地の面積(㎡)×2,250円 + 343,000円 |
400㎡~800㎡ | 申請土地の面積(㎡)×2,110円 + 399,000円 |
800㎡~ | 申請土地の面積(㎡)×2,010円 + 479,000円 |
「田・畑」の場合
<原則> 20万円
<例外>
申請土地が農用地として利用されている土地であれば、次の①~③の農地の場合は、面積に応じた算出方法となります。
①市街化区域又は用途地域が指定されている地域内の農地である
②農業振興地域の整備に関する法律の農用地区域内農地(通称 青地)である
③土地改良事業等の施工区域内農地である
250㎡以下 | 申請土地の面積(㎡)×1,210円 + 208,000円 |
250㎡~500㎡ | 申請土地の面積(㎡)×850円 + 298,000円 |
500㎡~1,000㎡ | 申請土地の面積(㎡)×810円 + 318,000円 |
1,000㎡~2,000㎡ | 申請土地の面積(㎡)×740円 + 388,000円 |
2,000㎡~4,000㎡ | 申請土地の面積(㎡)×650円 + 568,000円 |
4,000㎡~ | 申請土地の面積(㎡)×640円 + 608,000円 |
「森林」の場合
森林については、<原則>や<例外>がなく、申請面積に応じた算出方法となります。
750㎡以下 | 申請土地の面積(㎡)×59円 + 210,000円 |
750㎡~1,500㎡ | 申請土地の面積(㎡)×24円 + 237,000円 |
1,500㎡~3,000㎡ | 申請土地の面積(㎡)×17円 + 248,000円 |
3,000㎡~6,000㎡ | 申請土地の面積(㎡)×12円 + 263,000円 |
6,000㎡~12,000㎡ | 申請土地の面積(㎡)×8円 + 287,000円 |
12,000㎡~ | 申請土地の面積(㎡)×6円 + 311,000円 |
「その他(雑種地や原野等)」の場合
面積に関わらず、一律20万円となります。
※雑種地になると、一気に負担金が安くなります。登記上では「宅地」になっているが、実際は草等が生えて雑種地のようになっている。等の場合は、一旦地目を「雑種地」に変更してから申請すると、負担金を安く済ませる事ができます。
負担金の支払いと注意点
国庫帰属の申請が承認された場合、法務局から申請者に対して、負担金の納入に関する納入通知書が送付されます。
<支払い方法>
・納入期限 負担金の通知が到達した翌日から30日以内
・支払い方法 日本銀行、都市銀行、ゆうちょ、信用金庫、信用組合、農協、漁協等
<注意点>
・負担金が納付された時点で、土地の所有権が国に移転します
・負担金が納入期限内に納入されない場合、国庫帰属の承認が失効します。
承認が失効したら、同一土地で国庫帰属を希望する場合、再度申請からになります。
負担金の軽減策
隣接する2筆以上の土地のいずれもが同一の土地区分である場合、申出をする事で1筆の土地とみなして負担金を算出する事ができます。
例: 土地A(100㎡)の隣接地である土地B(200㎡)。2筆とも、「宅地」で「市街化区域内」の場合、1筆として申出する事で負担金を1筆分として算出でき、負担金の額が軽減されます。
※土地Aと土地Bそれぞれで国庫帰属の申請をし(申請者が異なる場合でも可)、その後共同して申出を行う必要がある。
実際に計算してみた
- 例えば、当事務所(愛媛県松山市雄郡2丁目)のマンションの土地について考えてみました。
市街化区域か? → 市街化区域である。※面積に応じた負担金となる。
面積は? → 約300㎡
負担金 → 300㎡ × 2,250円 + 343,000円 = 1,018,000円 - 例えば、最近農地転用にてお世話になったとある農地(田)について考えてみました。
市街化区域か? → 市街化区域ではない。
農用地区域内農地か? → 農用地区域内農地(通称 青地)である。※面積に応じた負担金となる。
面積は? → 約600㎡
負担金 → 600㎡ × 810円 + 318,000円 = 804,000円
最後に
実際に計算してみると分かるのですが、負担金が思ったより高額になるケースがあるという事です。不要土地は、まずはやはり売却を考えてみるといいかと思います。とはいえ、売りたくても売れない!というケースがあるからこそ、この制度の存在意義があるのかもしれません。どうしても売れない。管理が大変。等の場合は、1つの判断材料として知っておく事が大事であると思います。荒地をそのまま放置しており、何かの災害をもたらしてしまうという事も考えられるからです。